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観光船事故とROVの役割

更新日:2023年1月21日


北海道の知床半島沖で大変痛ましい事故が起きてしまいました。

観光船「KAZU 1」の沈没事故で犠牲になられた方のご冥福をお祈りし、ご家族の方々に心よりお悔やみを申し上げます。また、いまだ行方のわからない方々の一刻も早い発見を祈念いたします。


報道では、観光船は水深およそ120メートルの海底に沈んでいるとされています。

知床半島付近の海は、もともと潮の流れが急な上に、景観の美しさから観光資源となっている海中まで続く急峻な崖によって、潮流はさらに複雑な流れになっていることが想像されます。


報道によると、第1管区海上保安本部と自衛隊、警察が数種類の水中カメラによって捜索を試みているとのことですが、海上自衛隊の大型の水中カメラでは手がかりがつかめず、警察が投入した小型のカメラだけが船内に入ることができたと報じられています(2022年5月6日時点)。


大型のROVは、その容積の大きさから水中でも安定性が高く、またスラスター(推進装置)のトルクが大きいので潮流に対して影響を受けにくいのですが、今回のような、沈没した船の細部を調査するような用途には小回りが利かないため、活躍の機会が得られなかったようです。


船内に入ることができた小型のカメラというのは、恐らく弊社が取り扱っているROV(水中ドローン)と呼ばれるものの一種だと推測されます。


今回のような目的で使用されるROVは、サイズとしては大人の腕で抱えられるくらいの大きさと重さで、スラスターと呼ばれるプロペラを用いた推進装置を使い、三軸方向以上に進むことができます。操縦はケーブルを通じて、パソコン画面やスマートフォン、専用のコントローラーなどから行います。

ROVには一般的なカメラのほか、目的に応じて各種センセーやソナー、アームなどを取り付けることができ、映像撮影以外にも各種調査や点検など、いろいろな用途に使用されています。


操作自体は誰にでも簡単にできますが、機体を正確にコントロールするにはかなりの習熟が必要です。

カメラを搭載はしていますが、視野が限られているため、水流のある中を意図した方向に進めるだけでも、相応の訓練が必要です。


また、水中にはGPSの信号が届かないため、ROVの正確な位置を把握するためには専用の装備が必要となります。


一般的に、ROVで洋上から水中を調査する場合は、船に搭載したイメージングソナーと呼ばれる装置で水中の様子とROVの現在地とを捉えながら、ROVからの映像を確認しつつ作業します。

また、QPSやUSBLと呼ばれる水中音響即位装置では、水上で捉えたGPS信号と、音響機器とを組み合わせて、ROVの位置を把握する事ができます。


KAZU 1に限らず、船舶にはアンテナやレーダー、転落防止用の手すりなど様々な附属物があるため、ROVのケーブルが引っかかりやすく、潮流の激しい場所で精密にコントロールすることは至難の業です。

実際に船内からROVを回収できなくなるというトラブルも発生しているとのことですが、このような条件下でROVを船内まで送り込み、映像を撮影するというのは技術的に大変困難で、操縦者や関係者の捜索への強い思いに敬服いたします。

また、ROVの持つ可能性を信じこの事業を始めた者として、ROVが捜索のさらなる一助となることを希求いたします。




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